性犯罪に関する刑事法検討会作成にかかる取りまとめ報告書について


2021年(令和3年)6月24日

法務省内に設置されている「性犯罪に関する刑事法検討会」(検討会)は、令和3年5月に、これまでの検討結果に関する取りまとめ報告書(報告書)を公表しました。

他方、当会は、検討会に対して、すでに我が国の性犯罪規制の在り方について提言(当会提言)を提出をしておりました。

そこで、今回の検討会の報告書の内容を確認し、改めて当会提言と比較した文書(取りまとめ報告書について)を作成いたしました。

報告書と当会提言のそれぞれの理解の一助になればと考えるところです。

性犯罪に関する刑事法検討会
作成にかかる
取りまとめ報告書について


以下では、「取りまとめ報告書について」で挙げておりました、〈取りまとめ報告書の概要〉と〈当会提言の条文欄〉の箇所は省略して、当会提言と比較した際のコメントについての概略を述べたいと思います。

なお、条文については、書き下したものにしてあります。


Ⅰ 暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について

1.報告書の内容

報告書では、まず、性犯罪処罰規定の本質が、被害者が同意していないにもかかわらず性的行為を行うことにあるという結論には異論がでなかったことを述べております。

また、「暴行・脅迫」や「抗拒不能」の要件が障害となり、同意のない性交が処罰されていない現実があることから、法改正が求められると議論され、その上で、処罰すべき行為を取り込み、処罰すべきでない行為を取り込まないような内容にする必要があるとされました。

また、単に被害者の「不同意」のみを要件とすることには、処罰の対象を過不足なく捕捉することができるかという点で課題が残るため、不同意を徴表する客観的要素を構成要件に明示し、処罰範囲を明確とすべきであるとして、客観的要素を構成要件に明示する際の内容について検討しております。

以下では、①いわゆる不同意性交罪の創設に関して報告書から窺われる内容等、②手段・状態に関する列挙について、述べた上で、③法定刑についても若干触れたいと思います。

2.いわゆる不同意性交罪の創設について

報告書では、「不同意を徴表する客観的要素」の明示に議論が集約しており、付加的要素なしに不同意のみを構成要件とするいわゆる「不同意性交罪」の創設については、消極的にみえます。

これは、当会提言においても、「不同意」という被害者の主観のみを構成要件とした場合に不明確になりがちであるとの危惧と一致するものと考えられます。

その一方で、報告書では、不同意を「徴表する客観的要素」については、行為態様や状態を列挙することによって対応しようとし、包括的な要件を設けることの検討の必要性にも言及があるものの、端的に、不同意を徴表する事情がある場合を、不同意性交罪とするかについてはそこまで議論がされているようには見受けられません。

これに対して、当会提言では、ドイツ法を参考に、178条の3第1項として、以下の条項を提案しているところです。

(不同意性交等)第178条の3第1項

認識することができる人の意思に反して

性交等若しくは手淫等をし、又は継続した者は、

1年以上10年以下の懲役に処する。 

当会提言では、「認識することができる人の意思に反する」として、不同意を徴表する客観的事情がある場合に、性交などを開始し、或いは継続してはならないことを構成要件として提案しております。

今後の法制審議会での議論では、このような方向での不同意性交罪もあることを、今一度、述べたいと思います。


なお、不同意性交罪を設けた場合には、被害者の錯誤と不同意との関係も問題となります。

この点については、当会提言では、178条の3第2項において、どのような錯誤であれば、不同意性交罪として扱われるかを明示することによって、第1項の不同意性交等罪では、錯誤の問題が生じないように棲み分けをすることを提案しているところです。

第178条の3第2項

性交等又は手淫等の性質又は態様についての人の錯誤であって

当該錯誤がなければ性交等又は手淫等が人の意思に反することとなるものに乗じて、

性交等若しくは手淫等をし、又は継続した者についても、

前項と同様とする。

すなわち、あくまでも性交などの性質や態様についての錯誤でなければならず(錯誤自体の限定)、また、その錯誤と不同意との関連性を必要とし(条件関係による限定)、さらに、当該錯誤に乗じるとの故意を必要とすること(主観面による限定)を条文化することによって、錯誤が問題となった場合の不同意性交等罪がいたずらに拡大しないようにすることを意図するものです。

このように、客観的要素と錯誤の問題両面から、「意に反する性的行為」とする場合の処罰範囲の限定を提案するものです。

3.手段の列挙について

当会提言は、不同意性交罪を包括的な要件としつつ、手段・状態も列挙することで、被害者が同意していない性的行為の処罰対象の明確化を図ることを意図しております(状態については、後述)。

手段に着目した具体的な条項としては、強制わいせつ罪における再狭義の暴行に加え、「威力」わいせつ罪(176条の2第1項)、「威力」性交等罪(177条の2)というように、威力を手段として挙げております。

(威力わいせつ)第176条の2第1項、(威力性交等)第177条の2(概略)

13歳以上の者に対し、

威力を用いて

わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
7年以下の懲役又は250万円以下の罰金/3年以上15年以下の有期懲役に処する。

また、不意に行われたわいせつ行為については、現行の強制わいせつ罪では、暴行行為に含めておりますが、条文解釈としては無理があると言わざるを得ないところです。

そのため、「不意打ち」行為を、威力わいせつ罪と同様に、列挙することを提案しております(176条の2第2項)。

(不意わいせつ)第176条の2第2項

13歳以上の者に対し、

不意に

わいせつな行為をした者も、前項〔第176条第1項〕と同様とする。

報告書では、暴行とともに新しい手段を列挙すると、これまで「暴行」として捕捉できていた行為を捕捉できなくなるおそれがあるとの懸念が述べられております。

しかし、強制わいせつ罪・強制性交等罪における「暴行」は再狭義の暴行として、最も侵害の程度の大きいものに純化し、その程度に至らないような意思を抑圧するような行為がなされた場合であっても、同意のない性的行為として処罰することを明確にすべく、当会提言の上記内容を挙げております。

4.状態の列挙について

当会提言では、状態に着目した規定としては、第178条の2(準威力わいせつ及び準威力性交等)を提言しました。

(準威力わいせつ及び準威力性交等)第178条の2第1項、第2項(概略)

  一 人の心神耗弱、
    又はアルコール若しくは薬物の影響により正常な判断が困難な状態
  
  二 前号に掲げるもののほか、人の抗拒の困難な状態

に乗じて、
又は、各号に定める状態にさせて、

わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
第176条の2/第177条の2の例による。

ただし、第2号の場合において、承諾を得たときはこの限りでない

イ. ここでは、①心神耗弱、②アルコール・薬物の影響により正常な判断が困難な状態、③その他人の抗拒の困難な状態を挙げております。

①は、準強制わいせつ罪・準強制性交等罪の「心神喪失」に至らない程度の状態で、「意思能力を喪失するには至っていなくとも、精神の健全さを欠き、事物の判断を行うために十分な普通人の知能を備えていない状態」(刑法248条参照)を捕捉する規定となっております。

また、②は、自動車運転処罰法2条1号に規定されている文言です。

報告書では、人の無意識、睡眠、催眠、酩酊、薬物の影響、疾患、障害、洗脳、畏怖、 恐怖、驚愕、困惑等といった具体的な状態の列挙が検討されておりますが、心神喪失に対応する心神耗弱で相当程度捕捉できるようにし、また、問題の特に大きい、アルコールや薬物利用を明確に規定することが当会提言の趣旨です。

なお、これらの類型の場合には、そもそも、真意に基づく承諾自体が考えづらいため、③その他人の抗拒の困難な状態についてのみ、承諾を得た場合の除外規定を条項化してあります。


5.法定刑と当会提言の対比について

当会提言と、報告書との比較で特徴的なのは、このような新しい条項の創設と当罰性の程度(法定刑の程度)を比較しているところにあると考えられます。

報告書では、暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件に関して、手段や状態を列挙した場合に、その当罰性を、現在の強制わいせつ罪・強制性交等罪と比較して、どの程度にするかが問題となります。

確かに、性犯罪は重大な被害をもたらすもので、決して軽視されるべきものではありません。その一方で、刑罰規定の法定刑は、行為と結果の両方の側面から、判断されるべきもので、行為態様に軽重がある場合には、法定刑においても、その点は反映されるべきものです。

強制わいせつ罪・強制性交等罪は、基本的に再狭義の暴行・脅迫として最も法益侵害の程度が大きい犯罪類型であるため、手段や状態を列挙し、或いは不同意性交等罪を規定したとしても、これらと強制わいせつ罪・強制性交等罪とが同程度の当罰性があるとは直ちに言い難いところです。

むしろ、強制わいせつ罪・強制性交等罪と同程度の当罰性とすると、全体的な起訴のハードルが上がるか、逆に、再狭義の暴行脅迫による強制わいせつ罪・強制性交等罪の起訴のハードルが弛緩するかといったことが懸念されます。

よって、新しい条項については、別途法定刑を検討すべきです。

当会提言においては、このような問題意識から、下の図の関係になるような法定刑を提案したところである。

なお、報告書では、2名以上が現場で共同した場合や被害者が一定年齢未満の場合、常習的・継続的な犯行の場合の加重類型を設けることが検討されております。これらが、基本的に、加重事由として考慮されるべきことはその通りですが、各国法との比較も踏まえ、当会提言としては、別途、法定刑を上げる条文を設けることは提言しておりません。

Ⅱ 地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方について

 1.報告書の内容

 地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方として、報告書では、①地位・関係性を利用した場合に加えて、②同一被害者への継続的な性的行為を処罰する規定及び③いわゆるグルーミング行為を処罰する規定についても検討されています。この内、①について当会の考え方を述べさせていただきます。

 2.被害者の年齢を利用する類型について

当会では、「22歳未満の者」に対して、その者を監護している者であることによる影響力を利用した場合に関する、地位濫用わいせつ等、地位濫用性交等の罪の新設を提言しております。

(地位濫用わいせつ及び地位濫用性交等)第179条の2第1項第1号、第2項第1号(概略)

22歳未満の者に対し、

その者を監護、扶養その他法律上又は事実上の地位に基づいて管理又は監督している者であることによる
影響力

を濫用して、

わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
第176条の2/第177条の2の例による。

第1号の影響力を行使できる立場にある者の配偶者又はこれに準じる立場にある者がした場合も、
同様とする。

報告書でも触れられているとおり、若年の被害者に対するわいせつ行為について刑罰を科す必要性が認められることは、当会においても同様に考えております。

報告書では、児童福祉法上の淫行をさせる罪等の適用について触れられていますが、我が国では、民法上成年年齢に達しており、「児童」に該当しない場合であっても、大学に進学するなどしており、親などから独立しておらず、監護、扶養をしている者からの影響力を強く受けやすい立場にある者が多いものと考えられます。

22歳という年齢を定めたのは、我が国において学生としての身分を脱し、経済的に独立することが多い時機であることを踏まえたものです。

一方で、地位・関係性を利用した犯罪類型については、強制性交等罪と異なり、意に反する性交等であることを徴表する外形的な行為及びその行為についての認識を要せずに刑罰を科すことになりますし、既に成人している者との間の性交等について、不当に刑罰を科する範囲が拡大しないような構成要件とする必要があります。

そこで、刑罰を科する範囲を適切なものにするために、22歳未満の者を監護するなどしていることによる影響力の「濫用」するとの要件を定めました。

このほか、関係性による影響力を行使できるのは、現に監護する者だけに限られるわけではないため、法律上・事実上管理・監督する者と、さらにそのような影響力を直接行使できる者の配偶者など(再婚相手など)による場合も規定することを提言しております。

 3.被害者の身体障害又は知的障害を利用する類型について

報告書においても、現行法上の「心神喪失」又は「抗拒不能」に乗じた性行為として処罰可能である旨の意見が紹介されておりますが、「心神喪失」と認められる程度に重大な意思の抑圧がない場合であっても、被害者の意に反する性交等として刑罰を科すべき行為態様は十分に想定されるため、「心神喪失」という要件の下位規範として「心神耗弱」の状態に乗じた性交等に対する刑罰を定めております(上記もご参照ください。)。

その一方で、障害者の性的自己決定権も当然に尊重されるべきことは論を俟ちません。そこで、「心神耗弱に常にある者」についても、配偶者又はそれに準じる関係にある者に対する承諾があった場合には、刑罰を科さないことを明記しております(178条の3第3項)。

第178条の3第3項

知的障害その他の障害を有するために前2項に定める心神耗弱に常にある者に対し、
その配偶者又はそれに準じる関係のある者が、
その承諾を得て、
わいせつな行為又は性交等若しくは手淫等をするときは、
これを罰しない。 

 4.そのほかの類型について

報告書で提言されていた、後見人と被後見人の関係や医療機関の医療職や心理職・福祉施設職員と患者・利用者については、当会も関係性に着目した犯罪類型を設けるべきだと考えております。

一方で、関係性に着目した性交等に対する規定は、被害者との間の承諾の有無に関わらず刑罰を科すことになりますので、当該関係性が認められる者同士での関係性を背景とした性交等に限定する必要がありますので、影響力を濫用したことを要件として定めております。

(地位濫用わいせつ及び地位濫用性交等)第179条の2第1項、第2項(概略)

第2号

 老年者、身体障害者又は病者に対し、

 その者を保護する責任のある者又は現に保護する者であることによる影響力

 を濫用して

 わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
 第176条の2/第177条の2の例による。

 第2号の影響力を行使できる立場にある者の配偶者又はこれに準じる立場にある者がした場合も、同様とする。


第3号

 入院患者及び要介護者に対し、

 その者に診療、療養看護又は介護を提供する立場にある者であることによる影響力

 を濫用して

 わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
 第176条の2/第177条の2の例による。


第4号

 生徒及び学生に対し、

 その者に教育を提供する立場にある者であることによる影響力

 を濫用して

 わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
 第176条の2/第177条の2の例による。


第5号

 法令により拘禁された者に対し、

 その者を看守し又は護送する者であることによる影響力

 を濫用して

 わいせつな行為/性交等若しくは手淫等をし、又はさせた者は、
 第176条の2/第177条の2の例による。

生徒と教師の関係については、生徒の未成熟性と相俟って、影響力が特に行使しやすい類型といえますが、雇用者と被雇用者等のように、個別の事情によって両名の関係性が大きく異なり得るものについては、関係性のみを理由に刑罰を科すべきではないと考え、私達の提言内容からは外しております(ただし、当会提言では、不同意性交等罪が規定されているため、これによる捕捉は考えられます。)。

もっとも、今回の提言の中で触れていない関係性について、今後も刑罰を科すべきではないという訳ではなく、今後の社会の在り方を踏まえて追加することを否定するものではありません。

なお、報告書では触れられておりませんが、拘禁者と被拘禁者は、特に問題となりやすい類型といえるため(諸外国でも触れられていることが多いです。)、当会提言では、このような場合も犯罪類型として挙げております(179条の2第1項5号、同条第2項5号)。

Ⅲ 強制性交等の罪の対象となる行為の範囲について

検討会においては、平成29年改正刑法によって、性器だけでなく、肛門及び口腔に男性器を挿入することが強制性交等罪における「性交等」に含まれることになりましたが、これらの部位に身体の一部や器物を挿入することも同罪の処罰対象に含めるべきかどうかも、議論されました。

報告書では、このような行為を強制性交等罪に含めることには消極的に見受けられますが、強制わいせつ罪と強制性交等罪のいずれに振り分けるか、すなわち、どこまでが強制性交等罪と評価されるべき悪質性・当罰性を有する行為と考えるかがポイントとなります。

当会提言においては、強制性交等罪の保護法益である被害者の性的自由への侵害の態様・程度の点から想定される悪質性・当罰性を考え、加害者が、被害者の性器及び肛門に対して、加害者の身体の一部や器物を挿入させる場合については、強制性交等罪と同等の悪質性・当罰性を有するとの評価から、これらの行為類型を「手淫等」として処罰の対象とすることとしました。

 (強制性交等)第177条

13歳以上の者に対し、
暴行又は脅迫を用いて
性交、肛門性交若しくは口腔性交(以下「性交等」という。)

又は性器若しくは肛門への身体の部位若しくは物の挿入(以下「手淫等」という。)

をした者は、強制性交等の罪とし、
5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等又は手淫等をした者も、同様とする。 

その一方で、口腔性交とは異なり、被害者の口腔に身体の一部(性器以外)や器物を挿入するという行為類型については、必ずしも強制性交等罪に規定されている行為類型と同等の悪質性・当罰性を有するとは評価し難いところです。

当会が調査した諸外国の法制度においても、口腔に対する身体の一部や器物を挿入する行為類型については明示的に除外されていたことから、当会提言においても、口腔を対象とする身体の一部や器物を挿入する行為類型については「手淫等」から除外することにしました。

Ⅳ 過失犯処罰規定の創設について

報告書においては、加害者が被害者に同意があると誤信した場合に加害者を処罰する方法の一案として、過失犯処罰規定を設けることが挙げられています。

しかし、加害者の過失を否定するための同意の確認方法など判断基準が不明確であるとされ、被害者の不同意の徴表を構成要件で明確にすることを重視する意見が述べられました。その結果、過失犯処罰規定の創設について、具体的な検討は示されていません。

当会においても、過失犯処罰規定の創設について検討しましたが、性犯罪について過失犯を処罰するとなると、外縁が曖昧で性的自由に対する影響が大きいこと、過失致死傷罪との法定刑の均衡などを考慮し、現時点での過失犯処罰規定の創設については消極に解しています。

Ⅴ 性交同意年齢について

当会では、我が国の性交同意年齢が13歳であることに関し、13歳以上であっても保護の必要性が高い場合があると考えています。特に、13歳以上16歳未満(通常、中学在学中)の者については、意思決定や判断の能力がなお脆弱といえることについては、報告書と同様に考えています。他方で、同年代の者同士の性的行為を処罰対象から除く必要があることについても承知しています。

そこで、特に、13歳以上16歳未満の者に対して成人(18歳以上)が性交を行うときには、年齢差ゆえ成熟度の差が大きいことから保護の必要性が高いといえることを考慮し、年齢差に基づく脆弱性利用の類型として、第178条の3第3項を新設することを提言します。

(不同意性交等)第178条の3第3項

13歳以上16歳未満の者に対して、

性交等又は手淫等をした

18歳以上の者は、

第1項〔1年以上10年以下の懲役〕と同様とする。

法定刑については、報告書において、およそ自己の意思に基づかないものと同様とは言い難いことから相対的に軽い法定刑の罪とする考えが示されているのと同じく、当会においても、不同意性交等罪と同程度の当罰性を有する者として、下限を懲役1年とする条文を提言しています。

Ⅵ まとめ

報告書の方向性は、当会提言の方向性と概ね一致しているのではないかと思います。

その一方で、報告書で問題視された事項のいくつかについては、諸外国の規定を踏まえ、当会提言が挙げたような条項化によって対応可能なものもあるように思えましたが、残念ながら、そこまで踏み込んだ議論には至らなかったようです。

国会においてはさらなる議論の深化が期待されます。

当会提言は、専ら実体法に関するものとなっていますが、当然のことながら、手続法を軽視してよいというものではありません。

手続法については、特に、近時の心理学や社会学など関連する科学的知見を基に、実体法による規制が活かされるような法整備がされるべきです。

諸外国を見ても、性犯罪の規制の仕方や、性的同意をどのように見るかについては、苦心している形跡が見られます。

しかし、これは、社会が多様化していく中で、性的な自己決定とは、特に私的な事項についての自己決定であることを考えれば、ある意味当然であり、これについて、熟議を尽くし、少しずつ良い法制度を作り上げていくのが、民主主義国家として求められるところではないかと思います。

当会としても、引き続き注視をしていきたいと思います。